どのように書物を読むべきか ― 臨床における〈読む〉という実践

内省・関わり
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音楽や文学などの人文学に接している医学生の方が、医療現場でよく起こる「不確実性への耐性」があるという報告がありました。

それでは、今回は、どのように人文学に接するべきかについて、
文学を例に考えていきたいと思います。

参考にしたのは、
コロンビア大学で人文学と医学を架橋するリタ・シャロン先生
「ナラティブ・メディスン-物語医療が医療を変える-」という書物からです。

私なりの理解を噛み砕いて解説します。

コンテクスト(文脈)の意味の伝わり方

テクスト(文脈)の意味は、「それは何についてのものか」と「それはどのように作られているか」という2つの問いへの答え(内容と形式)のダイナミックな相互作用によって伝えられるということであり、よい読者はテクストの内容を理解すると同時に、それに意味を与える構造的な側面を同定する。

つまり、
テクストの意味とは、
「それが何について語っているのか」という問いと
「それがどのように構成されているのか」という問いへの答えが、
内容と形式の動的な相互作用によって現れてくるということです。

もっと噛み砕いて考えると、
文章の意味は、
「何が書いてあるか」だけで決まるものではなくて、
その文章が、
どんな順番で、どんな言葉を選び、どんな書き方をしているのか
というのが重要になってきます。

同じ内容であっても、言い方や語り方が違えば受け取られる意味は違います。

これを患者さんの語りに当てはめると、
言葉そのものを聞いて意味を考えるのではなくて、
どんな状況で、どんな言葉を選んで、どんな順番で話しているのか
によって医療者に受け取ってほしい意味が違うということです。

なぜ、そこまで考える必要があるのか

医療者はすでに、無意識のうちに「読み分ける」実践を行っています。

というのも、普段の臨床で私たちが行なっている「読む(理解)」という行為は二重構造になっています。

私たちは、
症状や表面などに現れる変化を読み
その下に隠された病態整理を読んでいます。

と同時に、
患者の語りの表面的な意味を聞き(読み)
その背後にある生活・苦悩・関係性を読んでいます。

つまり臨床では、
常に「表に出ているもの」と「隠れているもの」を同時に読んでいるわけです。


文章を読むときの、
内容だけを読むな、構造語り方も読め
という姿勢は、

臨床でいう。
症状だけを見るな、語られ方・言葉の選び方・文脈もみろ

という臨床の実践と一致しています。

文学理論を教えたいわけではない

私たちは、医学生や医療者に、複雑な文学理論や特定の作品の批評を教えるという課題に専心したいわけではない。学生に自分が読者であることをはっきりと理解させ、彼らの患者の物語を繊細な理解と尊重へと解放するスキルを身につけさせたいと思うのである。

リタ・シャロン先生は私たち医療者に難解な文学の読解方法を教えたいのではありません。

臨床で人の語りに向き合う姿勢を育てたいと考えているのです。

まとめ

臨床の現場では、人の言葉や身体を
いつも二重に読んでいます。
だからこそ、リタ・シャロンの書物を読むときの姿勢を大切にすることは、
医療の仕事の実践に必要であると述べています。

私たちは、患者さんのナラティブの読者である。
この心構えが重要です。

【文献】

リタ・シャロン(2015)『ナラティブ・メディスン-物語医療が医療を変える-』,医学書院,p155−189.

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