ナラティブが患者理解を深める

ナラティブ・語り
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ナラティブ(語り)がなぜ重要なのか。

一見、医療の世界とはズレている患者の語りに耳を傾けるとき、
時間的な制約も多い臨床の場面で、

医療的に、もっと重要なことがあるのではないか

と感じてしまうかもしれません。

私自身も、自分の必要な情報を取得するために、
あえて、閉じた質問(Closed question)を使用して
効率的に情報を集めようとすることも多々あります。

一方で、生活者の患者さんを理解するためには、
開かれた質問(Open-ended question)
広くナラティブを拾い上げるべき場面があります。
閉じた質問と開かれた質問についてはこちらをご覧ください。

医学的情報のみではイメージが人によって違う

ナラティブ研究会のセミナーで、グループで症例について考える時間がありました。

まず、事例について紙面でまとめられた報告書を見て、

グループで事例の印象や問題点について話し合いました。

事例は、80歳代後半の男性で
嚥下障害があり、胃瘻造設されていました。

誤嚥性肺炎を繰り返し発症してしまっている方で、
その度、身体機能が低下してしまい、
訪問リハビリを利用しておられました。

嚥下障害がありながらも、少量の食事を摂取しており、
何度も医療専門職と食事について話し合われていました。

事例についてグループで話し合うと、

嚥下障害について、理解できていないのでは
他に利用するべきサービスがあるのでは
医療職として指導方法を共有する必要があるのでは

など共通する多くの問題点が出てきました。

次に、この事例本人についてどのような印象を受けましたか?

と考えてみると、

参加者たちのこれまでの経験を元に、
個人特性や病気に関する捉え方など、
多くの異なったイメージが出てきたのです。

医療的な側面から話をすると、
比較的まとまった内容になるのに、

事例自身について考えると、
ばらつきが大きくなっている印象でした。

医療者と患者の対話から考える

次に、医療者と患者の対話の逐語録を配布しました。
※個人情報保護の観点から、内容は一部改変して作成

そこには、

生い立ち
病気に対する考え方
生活の楽しみ

が語られていました。

事例報告書だけでは、見えてこなかった部分です。

その後に再度グループで話し合うと、
事例に対するイメージは一致することが多くなり、

逆に、医療的なケアについては、
指導方法の際の注意事項など、
より細かなところまで考えていらっしゃいました。

現場だからこそ大切なナラティブ

今回の事例については、
あえて報告書を医療的な内容に限定していたため、
偏った話し合いになりました。

普段の臨床においては、
医療的側面のみではなく、
多職種で協議して、無意識の中でナラティブを拾い集めて、
方針が決定されている
と思います。

その無意識に考えられている内容を、
周囲の方と話し合うことは、
臨床家としての内省にも繋がると思います。

まとめ

患者さんの語りは、医療的判断に直接必要な情報ではないように感じられることがあります。
限られた時間の中で臨床を進める場面では、
閉じた質問によって必要な情報を効率的に集めることも、現実的な対応だと思います。

一方で、医学的情報だけを手がかりに患者像を描こうとすると、
医療者それぞれの経験や価値観によってイメージが異なり、
事例の捉え方にばらつきが生じることがあります。

対話の中で語られる生い立ちや病気の受け止め方、
日々の生活の中で大切にしていることは、事例報告書だけでは見えてこない部分です。
そうしたナラティブが共有されることで、患者さんが医療者間で共有され、
その後のケアについても、より具体的に考えられるようになるのだと感じました。

現場の臨床では、意識せずとも患者さんの語りを拾い集めながら方針が決められている場面が多いのかもしれません。
その「無意識の理解」を、
周囲の方と振り返ることが、
臨床家としての内省につながっていくのではないでしょうか。

あなたの臨床では、患者さんの語りはどのように扱われているでしょうか。

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