質的研究の困難さ

質的研究

看護師だけではなく、医師や理学療法士、作業療法士の分野においても質的研究が実施されるようになってきました。

私が学生時代、質的研究とは「アンケート」のようなものだとしか思っていました。

今回は、ナラティブ(語り)を分析するということに焦点を当てて考えてみます。

まず、アンケート=質的研究は正しくありません。

人が経験していること、その経験にどのような意味を与えているのか、そしてその語りがどのような文脈の中でできあがってきているかを丁寧に考えていきます。
確かに自由記載を採用してアンケートによる収集も可能ですが、上記の文脈に依存するという面で分析を困難にします。

たとえば、同じような語りであっても、その背景や関係性によって意味が変わることがあります。
研究者が「こういう意味だろう」と理解したことが、語った本人の感覚と必ずしも一致するとは限りません。

さらに、質的研究では研究者自身も研究の一部になります。
どの言葉に注目するのか、何を重要だと感じるのか、どのようにまとめるのか。
そうした判断には、研究者自身の関心や経験、価値観が少なからず関わっています。
私自身、ここで挫折することがあります💦
とても興味深いデータを分析する際の、自分の知識のなさやうまく言い表せれない悔しさ。
ここは、関連図書や論文を読み漁り、高めていくしかありません。一方で、関連図書の分厚いこと分厚いこと、、、

だからこそ、質的研究は難しいのだと思います。
明確な正解が最初からあるわけではなく、データを整理すれば自動的に答えが出るわけでもありません。
何気ない語りをすぐに切り捨てず、そこで何が語られているのかを考え続けることが求められます。

一方で、その難しさにこそ、質的研究の深さや意義があります。
医療の現場で生じている戸惑いや苦悩、患者さんや家族が経験している出来事は、客観的な数値だけでは十分に理解できません。
質的研究は、数値に表すことができない、あるいは、数値で表すべきではない視点。
これまで見過ごされやすかった視点を考えるきっかけにもなります。。

よく恩師に言われていたことがあります。
「文脈を無視する質的研究では、量的研究と変わらない。」
これは、量的研究を否定しているのではなく、質的研究の醍醐味を味わうことができていないという意味です。

私自身、どうしても医療者として納得できない方がいて、その方にお話を聞きに行ったのが質的研究の始まりでした。1時間を超えるインタビューの中には、対象者の出自や生き方、信念が含まれていました。質的研究とは、「簡単に整理できないもの」を扱う研究なのだと思います。

職場や学会での症例報告の際に、症例の背景が頭に浮かび、もっと知りたいと思うときがあります。症例報告や普段の臨床においても、質的な視点を持つことで、より深い理解に近づくのかもしれません。

一方で、質的研究が扱う内容は数値的な結果がきれいに出るわけではなく、直線ではなく曲線を描きます。だから難しい。

質的研究の困難さは、質的研究の深みを表しているのではないでしょうか。

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