セラピストが患者さんを一言で表すとき

内省・関わり

「あの患者さん、キャラが強くてさ」

臨床の中で、こんな言葉を耳にしたことがあるセラピストは少なくないと思います。
もしかすると、自分自身が使ったことがある人もいるかもしれません。
この、キャラクター(いわゆるキャラ)について考えてみます。

「キャラクター」という言葉が意味するもの

周囲の患者さんとは何か異なるとき

患者さんと接してみて、普段接する方々とは何か違う。
こだわりを強く感じて、医療者の意見に納得してもらえない。
過去の自分の生き方や考え方を、病院の中でも貫こうとする。
そんな患者さんに出会ったとき、「キャラクター」という言葉が思い浮かぶかもしれません。

「キャラクター」は違和感やもやもやを意味するのか?

医療現場における「キャラクター」という言葉は、
医療者が患者さんに対して違和感やもやもやを抱えたときに、思い浮かぶ言葉なのではないでしょうか?

つまり、「なぜ?」を具体的に言い表すことができないとも言えると思います。

そのため、「キャラクター」という言葉は、
忙しい臨床の中で、
「あの患者さんは何か違和感を感じるから、対応の際は戸惑わないように」
多職種への情報共有という文脈で使用しているのかと思います。

「なぜ?」が「確かに」に変わるまで

以前に、臨床の「なぜ?」を「確かに」に変えることができるヒントが、
ナラティブにはあるのではないかと投稿しました。
▶️『ナラティブを伝えるにはー“なぜ”が“確かに”に変わるまで』

心理学者のマイケル・ホワイトは、
「ナラティブに厚みを持たせる」ことが重要だとし、
自分自身や他者のアイデンティティを一言で要約してしまう言葉を使用することは、
ナラティブを薄くし、そして、ネガティブな方向へ導いてしまうこと
を指摘しています。

もちろん、「キャラクター」という言葉は、必ずしもネガティブな方向へ向かうとは言えません。

  • 明るいキャラクター
  • 真面目なキャラクター
  • 個性的なキャラクター

様々な文脈で使用される言葉です。

一方で、厚みのない理解になっている危険性については、頭に入れておく必要があります。

そして、「なぜ?」を「確かに」という、
理解できるナラティブに持っていくためには、
患者さんの背景を知ろうとする構えが重要になります。

まずは、自分に問いかける

まずは、自分に問いかけることが必要です。

「私は何に違和感を感じたのだろうか?」

違和感を感じるということは、
自分や組織の規範から外れたとき
です。

その上で、
患者さんや周囲の方々と対話をすることで、
「なぜ?」が「確かに」に変わってくるのではないかと思います。

「キャラクター」は禁句ではない

私自身、
医療現場で「キャラクター」という言葉を使うべきではない、
あるいはネガティブな言葉だ、
という立場でこの文章を書いているわけではありません。

その前提を踏まえた上で、
もし臨床の中で「キャラクター」という言葉が思い浮かんだときには、

一度、
医療者という規範を少し脇に置いて、
その患者さんのナラティブに耳を傾けてみる


そんな姿勢を持ってみてもよいのではないか、と考えています。

私たちは医療者ですから、
引けないところは引けませんし、
最善の医療を提供するという使命もあります。

そのことを大切にしながら、
それでもなお、目の前の人の語りに触れてみる。
その積み重ねが、「キャラクター」という言葉の奥にあるものを、
少しずつ見せてくれるのかもしれません。

まとめ

本稿で述べた内容は、
臨床での経験やナラティブに触れる中で私自身が考えてきたことであり、
少し踏み込んだ話題でもあるため、あくまで個人の見解です。

臨床で使われる「キャラクター」という言葉は、
患者さんを評価したり分類したりするための言葉というよりも、
医療者が抱いた違和感やもやもやを表す言葉なのかもしれません。

それは、「なぜそう感じたのか」を、
まだ十分に言葉にできていない状態を示しているとも言えます。

「キャラクター」という言葉自体が問題なのではなく、
その言葉で理解が止まってしまうことに、注意が必要です。
一言で要約してしまうと、患者さんの語りは薄くなり、
背景や文脈が見えにくくなってしまいます。

もし臨床で「キャラが強い」と感じたときには、
まず自分自身を振り返る。

自分は何に違和感を覚えたのか。
それは、自分や組織のどんな規範とずれていたのか。


その上で、患者さんや周囲の人との対話を重ねていくことで、
「なぜ?」は少しずつ「確かに」へと近づいていくのかと思います。

「キャラクター」は禁句ではありません。

「キャラクター」という言葉が頭に浮かんだときに、
患者さんのナラティブに触れてみる、
そうすることで患者さんの見え方は、少し変わってくるのではないでしょうか。

【参考文献】

マイケル・ホワイト 著(2007)『ナラティヴ・プラクティスとエキゾチックな人生』,小森康永 監訳,金剛出版.

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