本サイトは、医療やケアの現場にある語りを、セラピストや医療者の視点から書いていく場として続けてきました。気づけば100記事を超えています。
多くの人に広く届く大きなサイトでは、まだまだありません。
それでも、続けてきたからこそ感じてきたことがあります。
今回は、本サイトの現在地として、いま感じていることを3つの点から書いてみます。
セラピストがナラティブを語る場は、まだ多くない
私が理学療法士になったときは、ナラティブ(narrative)という言葉はあまり知られていませんでしたが、今では、少しずつ耳にするようになってきました。
患者さんの語りに耳を傾けること、病いの経験を主観的なものとして捉えること、医療者と患者のあいだにある語りや文脈のずれを考えること。そうした視点の大切さは、さまざまな場で語られるようになっています。
一方で、理学療法士や作業療法士などのセラピストが、自分たちの臨床経験や迷い、苦悩を、ナラティブの言葉で継続して発信している場は、まだ多くありません。
セラピストの実践は、身体機能や日常動作、生活に深く関わるものです。
だからこそ、目の前の人の語りや暮らし、生き方に触れながら関わり方を変えていくことは少なくありません。けれども、そうした経験は、コミュニケーション能力やテクニック・手法の話とされてしまうことはあっても、語りとして丁寧に考える場は限られているように思います。
本サイトは、その限られた場のひとつでありたいと考えています。
きれいに整理された答えだけではなく、臨床のなかで生じる迷いや違和感、納得のできなさも含めて、書いていける場でありたいと思っています。
ともに作る場を目指しながら、まだ発信が先行している
本サイトは、研究会のメンバーや訪れてくださる方とともに、少しずつ形づくられていく場を目指しています。
語りは、一人で完結するものではありません。
読む人がいて、受け取られ方があり、ときに別の経験や別の語りを知ることで、また違った意味を帯びていきます。そう考えると、本来このサイトも、運営する側が一方的に文章を置いていくだけの場ではなく、研究会や訪問者とのあいだで育っていく場であるべきです。
ただ、現時点では、まだ発信が先行していることは否めません。
記事を書くこと、考えをまとめること、研究会で話されたことを言葉にすること。そうした活動は続いていますが、それが十分に対話になっているかといえば、まだまだの部分が大きいように思います。
それでも、誰かが読んでくださっていること、時折反応をいただけること、それが、このサイトにとって大きな支えになっています。
見えているやり取りが多くなくても、読まれているという事実によって、この場所の意味は少しはあるのかなと思います。
完成された場ではないからこそ、これからどう育っていくのか、育てていく必要があるのかを含めて、このサイトの現在地なのだと感じています。
他のセラピストのエッセイを読めることも、このサイトの特徴です
本サイトのひとつの特徴は、運営者だけではなく、他のセラピストのエッセイを読むことができる点にあります。
臨床にいると、同じ医療職であっても、見ている視点や引っかかる点、言葉にしたくなる経験は少しずつ異なります。
ある人は患者さんとの関わりのなかで生じた苦悩を語り、ある人は日々の実践の中で感じた違和感を語り、またある人は自分自身の専門職としてのあり方を問い直そうとします。
そうした複数の語りに触れられることは、このサイトの大切な価値のひとつだと考えています。
ひとつの立場やひとつの考え方だけではなく、それぞれの経験がそれぞれの言葉で語られていることが、この場を広げてくれます。
また、医療やケアについて考えるとき、答えをひとつにまとめることよりも、異なる経験や語りが並んでいること自体が自分自身の内省につながります。
このサイトを初めて訪れてくださった方には、ぜひそうしたエッセイにも目を向けていただけたらうれしく思います。
一人の語りだけでは見えてこないものが、別の語りによって少し違った角度から見えてくるかもしれません。
おわりに
本サイトは、まだ大きな場ではありません。
対話のかたちも、これから育てていく段階にあります。
それでも、セラピストがナラティブを語る場として、そして複数の語りに触れることのできる場として、少しずつ積み重なってきたものは確かにあるように思います。
本サイトの現在地は、完成ではなく途中にあります。
そもそも、完成などはありえないと考えております。
これからも、医療やケアの現場で生まれる語りを、自分なりに文化人類学や社会学、多方面の先生方の書物や論文を読ませていただきながら書いていけたらと思っています。
ぜひ、少しでも興味を持っていただけたらコメントを残していただけると嬉しいです。
また、気になるワードを検索してみてください。何かご参考になる記事に出会うかもしれません。


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