アメリカの社会学者のタルコット・パーソンズの「病人役割」という概念
「病気は生理的な異常であると同時に社会的な逸脱の一種である」
つまり、病人になるということは、労働などの社会的役割の責任が免除されると同時に、医療者に従い、快復にむけて懸命に努力しなければならないということを求められることになります。
この「役割」という言葉
- 家での役割
- 会社での役割
- 趣味の場での役割
人によって、集団によって、社会によって異なってくると思います。
実際に臨床では、社会的背景を聞き取ることは自然に行われています。
- 誰と何人で暮らしているか
- 家事はどなたが担っているか
- 仕事はどのような内容か
社会復帰という目標を考えるうえで、患者になる前の状態を知ることは重要になってきます。
これらを「役割」で考えてみたとき、
パーソンズのいう「病人役割」は、病気になることで社会的役割から一時的に外れることが正当化される一方で、回復に向けて努力し、専門家の援助を求め、その助言に従うことが期待される、という枠組みとして整理されています。病いが単なる身体の異常ではなく、社会的な位置づけの変化でもあることを示した概念です。
ただ、臨床で出会う患者さんの役割はそれほど単純なものではありません。
- 家事を完全に担っている人(周囲の人は家事が苦手)
- 会社で責任を負う仕事を引き受けている人
- 地域の方々のために積極的に地域活動に参加している人
- 趣味の集まりの中で中心人物として活動している人
こうした役割は、単なる仕事内容や肩書など捉えきれないことがあります。
そのため、社会的背景をより深く理解したいとするならば、
その人がどのような経緯でその役割を担うようになったのか、
そして周囲の人たちとの関係の中でその役割がどのような意味を持ってきたのかを知る必要があります。
病気になると、身体機能が低下するのみではなく、これまで引き受けてきた役割を失うことにつながります。その役割が、患者さんにとってどのような意味を持ってきたのか。また周囲の方にどのような影響を与えていたのか。
そこまで考えることができれば、患者さんを理解する視点はさらに厚みを増してきます。
社会的背景を聞き取るとは、その人の生活を取り巻く環境を確認することにとどまりません。むしろ、その人がどのような役割のなかで生きてきたのか、そして病いによって何が揺らいでいるのかを理解しようとすることでもあります。
「病人役割」という視点を通して患者さんを見てみると、その人ごとに異なる暮らしや関係の重なりが見えてきます。
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【参考文献】
田中恒男.医療における患者の役割.糖尿病.1979;22(2):224-227



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