医学とはテクノロジーと芸術の間にあるのですよ。
今回参考にしたのは、河合隼雄氏と斎藤清二氏による対談「Narrative Based Medicine―医療における『物語と対話』」です。『週刊医学界新聞』第2409号(2000年10月23日)に掲載されたもので、医療を単なる科学や技術としてだけではなく、物語や対話を含んだ営みとして捉え直そうとする対談です。
冒頭の引用は、その対談の中で印象に残っているワードです。
医師はドイツ語で「アルツト(Arzt)」と呼ばれ、その響きはどこかアーティストを連想させます。以前の投稿でも、私はアートとサイエンスの関係について触れました。
*『アートは最強の医学教育ツール』
対談の中で、日本の医学はサイエンスに偏りすぎている問題点を指摘しております。
本対談は2000年に開催されており、現在にそのまま当てはめることはできません。
一方で、現在でも学会や研修会で一般化されたエビデンスを議論することが多く、
事例研究については十分な時間をとって、検討することができていない点は共通しています。
以前、筆者が所属している学会で、
症例報告中心の発表が続いたとき、
実際の実践を知ることができ、非常に実りのあるものになりました。
症例数を集めて、統計処理を行い、
確からしさを追求する研究もとても勉強になりますが、
少数事例や症例を詳細に記述し、物語として議論することは医療者がサイエンスのみではなく、
芸術家としての一面もあることを認識させてくれます。
日本理学療法士会の生涯学習制度においても、
症例報告を必須項目としており、重要視しています。
特に、単位認定の取得のためには、30分以上の開催を条件としており、
議論時間を確保しています。
*日本理学療法士協会ー生涯学習制度ー後期研修について

「ある1例が,その例を超えて非常に多くの事象にヒントを与える」というものだと思います。例えば,不登校の中学3年生の事例発表をした時に,それ聞いた人が,中年の患者にも喘息の患者を抱える人にも「なるほど」と思うところが多い事例が,私はよい発表だと思っています。
事例研究のメリットはここにもあると思います。
事例研究の内容とは、異なる事例を担当していても、
なにか共通する何か、あるいは、これまでとは違った視点を与えてくれる。
物事を『相対化』することができるようになります。
医学を科学として学ぶことはもちろん大切です。
一方で、事例を通して人や関係性の複雑さに触れること。
つまりナラティブを取り入れることは、
医学と芸術のあいだにある臨床を考えることにつながるのだと思います。
今一度、
みなさんも事例を芸術的な角度で捉えてみることで、
これまで以上に深みのある臨床につながるのかもしれません。
【参考文献】
- 河合隼雄,斎藤清二:Narrative Based Medicine―医療における「物語と対話」.週刊医学界新聞,第2409号,2000年10月23日.https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n2000dir/n2409dir/n2409_01.htm



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