セラピストの学会や研究会でも、質的研究の発表を見かける機会が増えてきました(私のいる地域ではまだまだですが、、、)。
インタビュー調査の結果を分析した発表、研究対象者の例えば患者さんの語りをテーマごとに整理した研究、現象学的な視点で臨床経験を記述した論文──数年前に比べると、明らかに増えてきたと感じています。
それはとても自然な変化だと思っています。リハビリテーション領域では長らく、「効果があるかどうか」をデータで示すことが重視されてきました。数値で測れる成果が求められ、量的研究が評価の中心にありました。でも、患者さんがリハビリの中で何を感じ、何に戸惑い、どんな意味を見出しているか──そういった「生のデータ」は、数値だけでは拾えないこともあります。
質的研究は仮説生成型研究が中心とも言われており、量的研究の仮説検証型研究と補完し合いながら実践されます。
数分の発表、膨大な手間
しかし、発表の現場に行くたびに感じるもやもや。
それは、質的研究は、量的研究と比較してプレッシャーがかかります。インタビューを行い、逐語録を起こし、コードを付け、カテゴリーを生成し、解釈を重ねる。一つの研究を仕上げるまでに、数えきれないほどの試行錯誤があります。
それなのに、学会発表の持ち時間は数分です。
「以上です。ご質問はありますか?」と言って演台を降りるとき、発表者はどんな気持ちでいるのだろうと思うことがあります。あの手間暇を、数分に圧縮するしかない。そのもどかしさは、私自身も感じてきたことです。
もちろん、発表の場はそういうものだという理解はあります。でも、質的研究が示していることの深さと、発表時間の短さのあいだには、どうしても埋まらない溝があると感じていました。
「PTのための質的研究発表会」を立ち上げた理由
そこで、もっとゆっくり語り合える場をつくりたいと思いました。
「PTのための質的研究発表会」は、そういう思いから立ち上げられた研究会です。数分ではなく、もっと時間をかけて一つの研究と向き合う場。分析の過程で感じた迷いや、解釈に悩んだ場面を、丁寧に言葉にできる場。質的研究に初めて取り組もうとしている方が、経験者と話しながら進めていける場。
質的研究の価値は、「結果」にあるのではなく、「テーマを含めてどのように探っていくかというプロセス」にもあると感じています。そのプロセスを共有できる場が、もっとあってもいいのではないかと思っています。
立ち上げた第1回には、20名を超える方にご参加いただきました。質的に物事を捉えて、より深い洞察を得たいという方々が、これだけいるのだと感じた瞬間でした。これからも、そういう方と一緒に考えていける場にしていきたいと思っています。ご興味のある方は、お問い合わせください。
→ リハビリテーション分野と質的研究──数字に還元できない経験を、どう研究するか
→ 質的勉強会の立ち上げ──なぜ医療現場に、質的研究の勉強会が必要だったのか
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