リハビリ中に、整体や鍼にも通っていること——言いにくいことを、言ってもいい

身近な人・病院・その他の方法という三つの場所を、人が行き来している図 患者さん・ご家族の方へ

膝の手術を受けて、リハビリに通っている。待合室で一緒になった人から「あそこの整体がよく効く」と聞いた。家族も「試してみたら」と言う。

半信半疑で行ってみたら、少し楽になった気がする。それから、ときどき通っている。

でも、担当の療法士さんには言っていない。

この記事は、医療との関わりのなかで、何らかの迷いを抱えている方に読んでいただけたらと思って書いています。私はリハビリテーションの専門職(理学療法士)で、医師ではありません。診断や治療そのものについて述べる立場にはありませんが、医療の現場で広く共有されている考え方について書いてみます。

人は、病院の外でも相談している

医療人類学者のアーサー・クラインマンは、人が体の不調を感じたときに頼る先を、三つに分けて整理しました。

ひとつは、家族や友人、近所の人。もうひとつは、病院や診療所などの専門機関。そしてもうひとつが、整体や鍼灸、あるいは昔から伝わる方法です。

興味深いのは、「最初の行動を決めているのは、たいてい一つめだ」と論じられていることです。

腰が痛いとき、人はまず病院に行くでしょうか。たいていは、家族に「腰が痛い」と言います。「昨日動きすぎたんじゃない」と返ってくれば、様子を見る。「近所の人が同じ症状で手術したらしい」と言われれば、受診する。

病院に行くかどうかは、病院の外で決まっているということです。

人が、体の不調を前にして頼る三つの場所1身近な人家族・友人・近所の人2専門の機関病院・診療所・リハビリ3その他の方法整体・鍼灸・体操などまた相談し、また試す——人はこのあいだを行き来しています最初の行動を決めているのは、たいてい1つめの「身近な人」です。病院に行くかどうかは、病院の外で決まっている、ということでもあります。アーサー・クラインマン『病いの語り』の整理をもとに作成

リハビリでも、同じことが起きている

これはリハビリでも、まったく同じです。

病院でのリハビリには、受けられる期間に区切りがあります。退院して外来に通い、やがてそれも終わる。でも、本人の体はそこで完成するわけではありません。

まだ痛みが残っている。もっとよくなりたい。そういうとき、人は自然に別の方法を探します。整体、鍼灸、自費のリハビリ施設、テレビで見た体操、通販の器具。家族や知人がすすめてくれることもあります。

これは、おかしなことでも、間違っていることでもありません。よくなりたいという、まっすぐな気持ちから出てくる行動です。

なぜ、言いにくいのか

それでも、医療者には言いにくい。

否定されるかもしれない。「そんなところに行っても」と言われそう。せっかく診てもらっているのに、信用していないと思われそう。あるいは単純に、忙しそうで切り出せない。

正直に言えば、医療者の側にも原因があると思います。代替的な方法に対して、頭ごなしに否定してしまう場面を、私自身も見てきました。言いにくくさせてきたのは、こちら側でもあります。

それでも、伝えてもらえると助かります

そのうえで、お願いに近いことを書きます。

伝えてもらえると、例えばですが、こちらの関わり方を調整できます。

体の状態によっては、その時期に避けておきたい動きや負荷があります。手術のあとや、骨が弱くなっているとき、血圧の問題があるときなどです。何を受けているかが分かっていれば、こちらの訓練内容をそれに合わせて加減できます。

逆に、知らないままだと、同じ部分に負担が重なっていることに気づけません。よかれと思って出した宿題が、ほかで受けている施術と噛み合っていないこともあります。

これは、やめさせるためではありません。安全のために知っておきたい、というだけのことです。

選ぶのは、ご本人です

念のために書いておきます。

どこに通うか、何を試すかを決めるのは、ご本人とご家族です。医療者が許可するものではありません。伝えるかどうかも、強制されることではありません。

ただ、言ってもいいということは、知っておいていただけたらと思います。「実は、こういうところにも行っています」と言われて、怒る医療者はそう多くありません。少なくとも、怒るべきではないと私は思っています。治したいという思いからの行動です。

おわりに

人は昔から、体の不調を前にして、いろいろな場所を行き来してきました。家族に相談し、病院に行き、それでも足りなければ別の方法を探す。クラインマンが整理したのは、そういう当たり前の姿です。

病院は、その行き来のなかの一つの場所にすぎません。全部を引き受けられるわけではないのです。

だからこそ、ほかで何が起きているかを教えてもらえると、こちらも少し役に立てることがあります。

→ 医療への不安や不満は、どこから来るのか——医療者と患者さんが見ているものの違い
→ 答えが出ないまま、一緒に考える——医療者も患者さんも、わからなさを抱えている


※ 本記事は、医療との関わりについての一般的な考え方をまとめたものです。体の状態によって注意すべきことは一人ひとり異なります。ほかの施術や運動を受けるかどうか、続けてよいかどうかは、必ず主治医や担当の療法士にご相談ください。

コメント