オープンコーディングと選択的コーディングとは——GTAの分析手順を整理する

オープンコーディングと選択的コーディングとは——GTAの分析手順を整理する 質的研究

質的研究を始めると、多くの人が「コーディング」という言葉でつまずきます。インタビューで集めた膨大な語りを前に、ここから何を、どう取り出せばいいのか。私自身、この手順を正確に理解できていない部分がありました。

今回は、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)におけるオープンコーディング選択的コーディングについて、文献をもとに整理してみたいと思います。


GTAの全体像——コーディングは分析の階段

グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)とは、「データに根ざして概念をつくり、概念同士の関係性を見つけて、理論を生成する」分析手法です(今福, 2021)。

その分析手順は、おおまかに次の階段を上っていきます。データ収集とテキスト化のあと、切片化(言語データを分析単位に分割すること)を行い、そこからオープンコーディング → 軸足コーディング → 選択的コーディングへと進み、最後にストーリーラインを作成します(今福, 2021)。

切片化 データを分析単位に分割 オープンコーディング ラベルづけ・カテゴリー生成 軸足コーディング カテゴリー同士を関連づける 選択的コーディング コア・カテゴリーへ統合 ストーリーライン 全体像を文章化 解説する2段階 その他の手順

コーディングは、この階段の中心にある作業です。バラバラのデータを、少しずつ抽象度の高い概念へとまとめ上げていく過程だと考えるとわかりやすいかもしれません。


オープンコーディング——データから概念を立ち上げる

オープンコーディングは、コーディングの最初の段階です。

ここでは、まずデータの一つひとつにプロパティ(切り口・視点)ディメンション(中身・内容)を書き込みます。次に、データに簡潔な名前をつけるラベルづけを行い、さらに複数のラベルを束ねてカテゴリーを生成していきます(今福, 2021)。

「オープン」という名前のとおり、この段階ではまだ結論を絞り込みません。データの中にどんな意味があるのかを、広く拾い上げ、名前をつけ、束ねていく。いわば、地面に散らばった語りに一つずつ名札をつけ、似たものを集めていく作業です。


選択的コーディング——コア・カテゴリーへ統合する

選択的コーディングは、コーディングの最終段階です。

ここでは、コア・カテゴリーに向けて各カテゴリーを関連づけていきます。コア・カテゴリーとは、「カテゴリーを統制して理論を生成する際の中心になるもの」であり、プロセスを把握することが重要になります(今福, 2021)。

オープンコーディングが「広げる」作業だとすれば、選択的コーディングは「絞り込み、束ねる」作業です。たくさん生まれたカテゴリーの中から中心となるものを見定め、他のカテゴリーをそこへ関連づけることで、ひとつの理論へと収束させていきます。

二つの違いを、表にまとめてみます。

オープンコーディング選択的コーディング
位置最初の段階最終段階
働き広げる絞り込み・束ねる
作業ラベルづけ → カテゴリー生成コア・カテゴリーへ各カテゴリーを関連づけ
イメージ散らばった語りに名札をつける中心を見定めて理論にまとめる

なお、この二つの間には軸足コーディングという段階があります。これはカテゴリー同士を関連づける作業で、「状況・行為/相互作用・帰結」というパラダイムを用いて各カテゴリーを再統合するものです(今福, 2021)。オープンで広げ、軸足でつなぎ、選択的で束ねる——そう捉えると、三つの段階の役割が見えてきます。


M-GTAでは位置づけが少し違う

ここで補足しておきたいことがあります。以前の記事で紹介したM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)では、これらのコーディングの扱いが少し異なります。

M-GTAは、データの切片化を行いません。そして、コーディングもオープンコーディングと選択的コーディングのみを、分析ワークシートを用いて進めます(今福, 2021)。同じ「オープンコーディング」「選択的コーディング」という言葉でも、どの手法に立つかによって位置づけが変わるのです。

用語が同じだからといって、手順まで同じとは限らない——質的研究を学ぶうえで、ここは混乱しやすいところだと感じています。

修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)とは何か
M-GTAの分析ワークシートとは——語りを概念にする一枚の表


おわりに

オープンコーディングと選択的コーディングは、「正解の名前を当てる」作業ではないのだと思います。データと向き合い、解釈を加え、その思考の過程を可視化していく——その地道な往復の積み重ねが、根拠のある理論を生み出していくのではないでしょうか。

私自身まだ理解の途中ですが、こうして手順を一段ずつ整理してみると、膨大なデータへの向き合い方が少し見えてくるように感じています。


参考文献:
今福輪太郎(2021).「質的研究を実施するうえで知っておきたい基本理念」.『薬学教育』第5巻. doi: 10.24489/jjphe.2020-002.

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